Tokyo / AW25 New brands available (NAMACHEKO)
NAMACHEKO—その名は、2017年、DilanとLezan Lurr兄妹の想像力から生まれました。
彼らの原点は、クルディスタンのキルクーク。写真家Serdem Nivarとのプロジェクトで切り取られた日常の断片は、やがてブランドの糸口となり、ひそやかに物語を紡ぎ始めます。初めてのコレクションは、伝統的な花嫁衣装に着想を得た手作りの衣服。保守的な社会の中で、それを纏ったのは若き従兄弟たち。短編映画の中で繰り広げられたその光景は、挑戦であると同時に解放でもありました。やがてその作品は、パリ・ファッションウィークという世界の舞台で鮮烈な存在感を放ちます。
クルドの記憶とスウェーデンでの暮らし。相反する二つの文化を往還しながら、NAMACHEKOは境界の狭間に息づきます。その姿勢は瞬く間に注目を集め、アントワープを拠点とする活動はベルギー・ファッション・アワードを受賞し、ウールマーク・プライズのファイナリストとしても選ばれました。
NAMACHEKOは以前から注目をしており、気になるブランドでした。ただ、style department_でのバイイングという観点からすると商品にはとても魅力があるんだけど、どこか気軽に着たりすることが出来ず、デザインが強すぎきでしまうという印象が正直ありました。今年の1月にパリに訪問した時にNAMACHEKOの展示会の案内を頂き訪問した時に私が感じていた印象とは違く、シンプルな洋服にエッジの効いたデザインのバランスがとても素敵でした。NAMACHEKOのデザイナーと話をしたときにもその印象を伝えたところ、洋服を作るテクニックなどに自信が持てるようになり、以前よりもシンプルな商品の構成が増えてきているということでした。縫製もとてもきれいで、一目見た瞬間にこのブランドをstyle department_のラインナップに加えたいと思い、取り扱いを決めました。


NAMACHEKOの創造は、建築的な構築性、そして丹念に編み上げられたニットに象徴されます。新たな素材への探究、映画のような物語性。初期のコレクションに響いていたクルディスタンの余韻は、やがて70年代ドイツ・ニューウェーブ映画の影を映し出し、さらに広がりを見せています。Dilanの美術史の知が息づき、アメリカを代表する写真家Gregory Crewdsonとのコラボレーションとして結晶しました。
そして、年刊誌『Kordyene』はブランドのもうひとつの声です。季節ごとのコレクションに秘められた文化的背景を探るその誌面は、第2号で美術史家 WilliamJ.Simonsを共同編集者に迎え、写真家Laurie Simmonsとの対話を重ねました。
そこに描かれるのは、時代の空気を映し出す新たな写真家たちの眼差し。NAMACHEKOは、境界の間に宿る静かな詩情を纏いながら、未来へと織り進んでいきます。




2025年秋冬、NAMACHEKOは「帰属を示す黙音のコード」を探求します。インスピレーションの源は、職業や日常習慣、あるいは装いを共有することで私たちが作り出す部族的な感覚です。反復されるシルエットは集合的なアイデンティティが形成されるさまを試みます。つまりは、同じように装うことが儀式であり言語となるのです。
アウターウェアは寛容で彫刻的に、ボトムスはテーラリングの鋭さを保ちながら身体との程良い距離感を保ち、レイヤリングにより自由と抑制のバランスを生み出します。すべてのピースは、ミニマルなシルエットでありながら、構築的で抒情的なNAMACHEKOらしいバランスの上に成り立ちます。本コレクションはタイムレス且つ微かにラディカルな装いを提示します。